はじめに
父木庭次守の投稿した原稿のコピーを,一昨日(2026年9月7日(月)),未整理資料の山からみつけた。おそらく『おほもと』誌ではないか。依頼原稿である。まずはこれをテキスト化して,その後,人類愛善運動と皇道運動などについて考えたいと思う。さて,,原稿の最後に,昭和五十五(1980)年十月二十五日記,とあった。同封のぼくの手紙に同封されていた地理学評論の抜き刷りも同年発行であった。ぼくが博士論文に取り組んでいる年である。
書き出しには,「本会の初代総裁出口王仁三郎聖師は」と続くので,大本愛善会または人類愛善新聞に掲載された原稿のようにも思えるが,「おほもと」誌での特集を構成する論文の可能性もある。
かなり大きなテーマであるが,ぼく自身の学びの導入としたい。なお,木庭次守の原稿には章番号などがなく,追加してわかりやすくと思っている。
開祖の大本神諭と聖師の霊界物語には,ぼくが『』を挿入している。なお,助詞などの使用に対してぼくに違和感がある場合,変更している場合がある。本論文の構造が明確になるように一部,章立てについては工夫している。原稿には見出しの上下が明記されていない。
なお,独特の文体である。以前,国立国語研究所から連絡があり,父の文章をデータベース化したいと。了解の旨,文書で伝えた。
なお,次のテキストでの( )はぼくの注記である。
1. 日本の世界的使命と人類愛善運動 by 木庭次守
第1章 三様の日本国
本会の初代総裁出口王仁三郎聖師は「日本国の意に三様あり。大宇宙を大日本と呼び,全地球を中日本と呼び,日本列島を小日本と呼ぶ」と教えられている。それは宇宙創造の構造であって,宇宙の創造神は,大宇宙と地球と日本列島を同型に創造されたというのである。大宇宙と同型に日本列島を創造し,日本列島を雛形として全地球上の大陸を想像されたと続くのである。
葦原の 中津国の 日の本は 紫微天界の 固まりなりけり
日の本と いへど地上全体の 葦原国の 称えなりけり
日本列島はじめ全地球は,実は,神の理想世界である紫微天界の理想の凝固したものであると説くのである。
神の紫微天界そのままに,全地は移写して創造されたものと説示している。
<日本国の使命>
総裁は重ねて白う(「白う」は「告げた」の意)。「地球上の生民(せいみん)=人種民族は,生まれた土地で得たものを使って自給自足すべきものである。世界の各国土には,それぞれの,国魂神がましまして,守護される。」 従って,国土にふさわしい生民に使命天職があるというのである。
日本国は天国の理想世界をそのまま具現したものである。従って,日本国の使命は大祓祝詞にある如く,「豊葦原の瑞穂国を安国と所知食(しろしめす)」すなわち,全世界の治平(ちへい,太平)にある。世界各国の治国安民の使命がある。『大本神諭』に「世界の天災も戦争も日本の人民の改心ができぬからであるぞよ」と啓示されてある。
日本人が天賦の使命を自覚して,第一に日本国に理想世界を建設し,つづいて,世界全体に治国安民の経綸を伝達して,自給自足の国家が建設される様に,進めることである。
第2章 神示の指導原理
世界中が今日,求めているものは,新しい指導原理である。すべての宗教教祖も,政治理念も,経済機構も,悉く野蛮至極のものであることが,(それぞれの指導原理)実行の結果,露呈した今日である。世界中の指導者が真剣に求めているものは,大宇宙の法則に合致した指導原理である。
日本国日本人の使命は,『古事記』に潜(ひそ)められた「邦家の経緯(ほうかのけいい),王化の鴻基(おうかのこうき)」である。宇宙創造の根本原理である。大本教祖,出口直子刀自,出口王仁三郎聖師が,幽の幽の神の啓示をうけて伝達した,『大本神諭』,『霊界物語』こそは,『古事記』神文の「本教」である。その内容は,宇宙の真相と人生の本義を解読し,世界各国の経綸を示されたものである。
日本国,日本人の使命は第一に,惟神の大道である。「本教」の研鑽である。
日本人は第一に,『大本神諭』と『霊界物語』を研鑽して,日本人自身が神子神孫の資格を備えることである。そして,第一に日本の社会をして,天国に化す努力をすることである。神示の理想世界を実現しつつ,人格の完成した人たちを世界各国に派遣して,世界の指導者に,新しい指導原理を伝達することである。国家社会づくりに助言することである。これこそ人類愛善の実践である。
<経済立て直しへの助言>
新しい指導原理の一部であるが,崩壊する財政立て直しの方法へ,いち早く世界各国に伝達して,先ず,財政的の危機を救うことである。
<日本の跡をふむ世界>
聖師は,「これからは日本のあとを踏む世界」と染筆されている。明治二十五年国祖国常立尊御再現以来,日本は,世界にさきがけて地球上に,神意に従って樹立される経綸の中枢となって動き出した。和光同塵の世の了りをつげて,五六七(ミロク)の神代に突入した。
王政復古によって,天皇の御名によって,日本建国以来はじめて,統一された。参照: 『霊界物語』第64巻上の第5章 至聖団。
明治維新には問題点もあるが,神意にもとづくものである。明治はまさしく,日月ならび治る年となった。(「明」は日と月からなる) 殊(こと)に(明治)二十五年からは,十が二つ出現する謎が実現され始めた。(開祖の言葉からだろう)
『大本神諭』には,地上天国建設のプログラムの大綱が示されている。この大予言は,着々と実現した。日清戦争,日露戦争,第一次世界大戦,第二次世界大戦,終戦まで明示されている。
『霊界物語』には,数万年先まで明示されている。すなわち,本格的に神代が樹立されるプログラムはもとより,その継続まで,詳細に示されているのである。
人類愛善運動は,以上の地上天国実現の大要を紹介するものである。すなわち,新しい指導原理の存在を宣伝する運動である。
愛善の 道は宇宙に みちみちて 神の国を あかしいるかも
愛善の道とは,神による新しい指導原理である。愛善運動はこの道を紹介する運動である。
世界中の出来事は,悉く,先ずは大本教団にあらわれ,第二に日本国に移写され,第三には世界に実現するという。一口で言えば,世界中,日本の跡を踏んで,地上天国が実現されるのである。
<大掃除と正月>
例えて言えば,世界中の大掃除大洗濯,立て替え立て直しが必要である。日本の建て替えは,飢饉,病気,戦争の小三災(せうさんさい)で行われると示されたが,第二次世界大戦中のものは日本国内ではまさしく,その通りであった。
世界の立て替えは大三災で行われるという。風,水,火(天災地変のこと)である。いつまでも反省せず今日の状態を続けたら,天使たちはいかなる快挙に出られるかも知れない,天災地変による見せしめは恐ろしい,とある。人類が(できるだけ早く)改心して,これは是非御免を蒙りたいものである。早く大掃除を済まして,ミロクの世,地上天国の御代をお迎えしたいものである。
掃除は,床間(とこのま)を丁寧に掃除し,次いで座敷を箒で掃き,庭先は竹箒で強く清掃する。日本は床間だから,穏やかに済まされた。中国は座敷だから,少し手荒に実行される。中国の周囲は庭先のために,竹箒が使われている。指導者の改心ができれば,大難も無難となすこともできる。『大本神諭』に,「上の人民ばかりでない。下の人民も心が汚い」とある。一般の人民も心を清く持たなければ,本当の天国は地に降らない。
<世界を救う使命>
日本人が神の子たる自覚をして,弱小国,後進国を助けることが大切である。経済大国とまで言われる日本の人々が動く時は,必ず,相手に幸福と平和を分たねばならない。欧米先進国は弱小民族や国家を搾取したが,日本は決して行ってはならない。
<敵愾心を取り去る>
真の平和の実現のためには,敵愾心を取り去ることである。明治維新にあたり,統一せられた日本人の間から,敵愾心が排除された如く,異なる宗教国間や人種間の敵愾心は根本的に取り去られねばならない。
人類愛善の大旗を掲げて,世界中から,根本的に敵愾心を取り去る運動に徹することである。
<世界の国民生活の改善>
世界史の上でも,名君といわれる人たちは国民生活の安定をもって,政治の眼目とした。日本の世界的使命は,国内での国民生活安定の確立だけでなく,世界中の後進国の国民生活が安定するように助力することである。
<万教同根>
今日まで,世界の人種民族を精神的に支配してきたのは宗教である。宗教家の間,教団の間の敵愾心が戦争の原因となっている。敵愾心を取り払わずして平和は訪れない。万教同根の真理を各宗教家,各教団に伝えて,敵愾心を取り去ることが最も大切である。
日本人は,世界で最も文化全般への理解者である。宗教についても最も寛容ある理解者である。神道,儒教,仏教,キリスト教,ユダヤ教,回教などの理解者である。日本人こそは万教同根の最も良き理解者である。日本人が立ち上がる時は,世界中の宗教との交遊連絡によって,宗教上の敵愾心を世界中から取り去ることができるのである。日本人は平気で神像も仏像もキリスト像もマホメット像も礼拝できるが,それはその使命が日本人に付与されているからである。
日本人には,あらゆる方面で世界にまたがって,物質面・精神面の両面にわたり貢献すべき使命がある。
<国常立尊>
言霊学から見ると,国常立尊は,国=世界各国,常立=天壌無窮,万世一系,尊=神勅,を意味する。国祖国常立尊の神勅が『大本神諭』である。これは,天祖にます天照皇大神,伊邪那岐神,伊弉冉神の大神勅をそのまま伝達されたものである。日本人はこれを自覚し,地球上最も火と水と土に恵まれたことを知覚しつつ,日本の国土に地上天国を築き,その余力をもって,世界各国の繁栄のために活躍しなければならない。これが日本人の生き甲斐になり得るのである。
<日本人の肉体>
人類学からも日本人という人種を設定する必要があるほどに,日本人の肉体は恵まれている。(現代の人類学では,日本人は遺伝的文化的にまとまりのある集団として捉えられている。)寒帯でも熱帯でも活動できる能力を持っている。多産にして優秀である。この肉体と優秀なる頭脳により,世界の平和,人類の幸福に貢献すべき天賦(=生まれつき持っている才能)をもっているのである。それゆえ日本は,世界中の民族と人種を独立させ,自給自足させるために大いに活躍すべきなのである。
終章
『大本神諭』に「日本の人民三分になるぞよ。七分は外国にやるぞよ」とある。日本民族の三分は日本国土に定住して神業に奉仕し,七分は世界各地に移住してその民族を助けて,その国土を天国に化すべく奉仕しなければならない。
昭和五十五年十月二十五日記
2. 木庭次守論文について
日本人を選民としている。日本を世界の中心としている。このような世界観は,戦前には,確かにあったのである。そして,この文章が書かれた頃は,日本が敗戦からの急激な復興さらに発展を遂げた時代であった。戦前とは違うが,日本人としての自身または自覚が父だけでなく,社会にあったのだと思う。
さて,開祖=出口なおの予言は当たった。王仁三郎の予言も当たった。1935(昭和十)年の第二次大本事件で,青年木庭次守は郷里熊本およびその周辺で布教活動をしていて,事件の取り調べに対して「協力的でなかった」ためか,京都市中立売書に護送されることになった。この青年は長大な『霊界物語』をほぼ暗記し尽くすまでに学んでいたので,推薦と求めに応じて弁護資料のうち,教義について,資料を作ることになった。
世界の指導者の指導しうる宣伝使(キリスト教の宣教師にあたる)を世界に派遣して,世界を救うという観点は,王仁三郎の『霊界物語』にある。その免許皆伝書が『霊界物語』なのである。父から聞いたことである。
世界の指導者が改心すれば,その地が救われるという観点は,ヨーロッパなどにもあったかも知れない。朱子学もそれに類するものかも知れない。江戸時代には,朱子学が積極的に取り入れられた。古くは『日本書紀』や『続日本紀』にも類する考えがある。
人々を救うには,世界の指導者が改心すれば済むという,観点そのものが,今や疑問と言わざるを得ない。ぼくも父から『霊界物語』を読むように言われて,時々,読み進めてきた。それを理解することも多少可能になった。予言書である。それをぼくなりに発見してきた。
父の『霊界物語』の表向きの解釈がこの論文に繁栄されている。一般人に理解してもらうことが前提になって論を進めている。しかし,今や,一般人に,もうこの方向で理解してもらうことは難しいであろう。
3.追記:ドナルド・トランプ旋風からすると
前章の記述の流れいわば社会科学的分別のような臭いがある。実世界は,現状のドナルド・トランプ旋風から学ぶ必要がある。アドルフ・ヒットラーしかり。プーチンしかり,習近平しかりである。事実,独裁者が法を破り,平気で嘘をつき,国民を支配している。ちょっと気に入らない者がいたら故なく首を切る。擦り寄る者には席も金も与える。USAのような勢力が拮抗する二大政党的情況であっても,独裁的体制は可能なのである。
大衆煽動者が独裁者になりうる。このように考えると,指導者を改心させるというロジックは必ずしも荒唐無稽ではない。父から聞いたことがあるが,宣伝使が指導者を改心させるのではない。その背後に天使がいて,神がいる。そういうことだ。父の論文にはそのような表現はない。『霊界物語』ではそういう世界が描かれているのである。
4. 人類愛善新聞記事の例
戦前と戦後の新聞の具体例を今後示したいと考えている。
戦前の例:昭和九年四月二十三日号,
戦後の例:昭和三十五年四月二十一日号。
他のテーマでの研究を優先するため,ここで擱筆ではなく,中断したい。いつ戻れるかとは思うが。
以上,2026年9月11日。